2016年5月31日火曜日

フリートーク (だんだん良いものが欲しくなる....三味線)

昔、昔、その昔、日曜日の朝に、テレビでこんな番組があったのを覚えている人は何人いるでしょうか? 
細棹三味線
その番組というのは、一部上場企業の役員以上の錚々たるトップが、毎回4-5人づつ出演。ネットで調べても出てこない時代の話ですが、お稽古した長唄を披露するという、今では考えられない番組があったのです。 
企業のトップたる者の『嗜み(たしなみ)』として、というところがあったのでしょう。 いまそれをやったら、逆に企業トップがそんな事してていいの?なんて突込みが入るでしょうね。
まあ、今よりも時間がゆったり流れていた時のお話なんですが....。
それでも年末年始には、縁起物としての邦楽(長唄の演目で言えば松の緑とか末広がり)がよく放送されていました。ですがそれさえも、高度成長期を境に、邦楽と言われるものが、全く姿を消してしまう事態になっていったのです。
今はNHKでも夜に邦楽の番組が復活していますし、うれしい限りではあります。
せっかく日本が世界に誇れる様々な文化が有りながら、日本人自体がまだまだ気付いていないというのは残念でなりません。 
実は、このシリーズを書かなければと思ったのも、Google+やFacebookの若い人たちの中で、一生懸命頑張って、少しでも邦楽を広げようという人たちと出会ったからなんです。特にその発信に対して、外国の人たちの反応がすごい!(*_*)。日本でなくて何で海外から?
私一人が熱く語ったところで、何のお手伝いもできませんが、これから少しづつシリーズの中で触れていきたいと思っています。
ただ私自身、三味線のプロではありません。ただ生立ちの中で、傍らに常に三味線がそこにあったというレベルですので、多少ずれるかもしれませんが、そこはご愛嬌で勘弁してください。




そこで今日は、皆さんが実物としてあまり見たことが無い、楽器としての三味線の話です。

三味線は、大きく分けて、皮が貼ってある胴、指で絃を押える棹、絃を巻き取る糸巻部分の3つから出来上がっています。主な構造材としての木材と、その他の部品で構成されていています。
木材も使用する部分によって違っていて、
花梨、紫檀、黒檀、紅木など、
木とはいえ非常に硬い硬度をもつ素材で作られています。(比重も1.2程度 水に沈む)
またその他のパーツとしては
猫や犬の皮(胴)、
糸(正絹、またはナイロン製)、
胴掛(胴を覆うカバー)
そして撥(象牙、合成樹脂、木製)や
駒(象牙、骨、合成樹脂、木製)と
同じ部分でも様々な違う素材があります。
この素材の中には、日本では調達できず、海外に依存しているものがかなりあります。
そして、そのうちの象牙などは、ジュネーブ協定で輸出入を規制されている訳ですから、現実原材料を輸入することはできません。
今売っているものがその為に希少となって、価格が高いのは仕様がないのかもしれませんね。
また木材も日本では無いため、全てを原産地からの輸入に頼っています。
その中でも楽器に使用に耐えうる素材は僅少で、やはり高値での取引にならざるを得ないようです。 
要は日本文化の最たる楽器でありながら、その存在が危ういということに......。

三味線に関わる話を1話で書くわけには到底行きません。延々と続いてしまうので、今日はこんなエピソードを1つ.....。

皆さんこんな歌舞伎の演目を知っていますか?
『義経千本桜』
なんか聞いたことはあると思いませんか?  そう市川猿之助さんがワイヤーで宙づりになって
空中で踊る。そんなシーンを思い浮かべられましたでしょうか?

 


自分の親の皮を張った鼓を静御前が持っていると知った子ぎつねが、忠信に化け、鼓を取り返す際の、親を思う心情を表しているのです。
鼓の音を聴いた瞬間に『この音色の鼓は私の親 なつかしぃー!』と子ぎつねが懐かしそうに喜ぶわけです。


 わたしの家には残念なことにキツネはいないのですが、猫がいます。(正確にはいました。2匹ともかなりの長生きで20年近く飼っていたのですが.....。)
この飼っていた2匹と、この先代にあたる猫も、ある習性というか、こんなことがよく起きました。
それは、私がある三味線を弾くと必ずなるんです........。
猫皮を張った音色の響く三味線を弾くと、1曲弾き終わる長い時間、身動きせずにじーっと音を聞いているんです。まず動かないんです。 
ところが練習用の犬皮の三味線だと、いつの間にか、どこかへ行ってしまうという実に不思議なことが起こります。
実際に人間の耳で聞いても、音の余韻、響きが明らかに違うのは当然のように解る訳ですから、猫皮のもつ音色は、猫が聴けば、『狐忠信』ではありませんが、更に何かを感じていたのかもしれませんねー。 ほんとに不思議です。


次回は三味線音楽の系統について触れてみたいと思います。