レストランの出来事 (北京編)

以前の北京旅行にハマッタ私は、その後も紫禁城(故宮)見たさに何度も通うハメになってしまった。 一度の訪問では広大な紫禁城を見るには、あまりにも時間が足りないくらい。よほど例の『ラストエンペラー』のインパクトが強かったんだと思う。
二度目の訪問はまさに冬。北京の冬は湿度の低さか極端に寒く感じる。ダウンのロングコートと防寒のための耳当てはもっていったもののじわりと堪える。それでも現地の人の中にはこのくそ寒いのに人民服姿の人もいるくらいで、今のバブル中国とは比較にならないくらい、庶民の生活には裕福さは全く無かった。
私自身、ホテル以外言葉が通じないのを承知の上で、コミュニケーションにも不安はあったが、敢えて個人旅行のスタイルを選んでみた。(2回目だから....)
実際に行ってみると、漢字の筆談で結構旅が出来るもんだ。
その日もホテルを出て、メモ紙に『紫禁城』と書いた紙をタクシー運転手に渡す。そして無事到着。
寒さのためか、人が少ない。私にとってはうれしいことだ。 
ただし今と違って、外国人が使用する案内用のレンタルホンが無く、日本から持っていった本を片手に主要な建物を見て回る。結構動きまわっているのにも拘らず、足元から冷えてくる。 うっーさぶっ! 一回目のノルマも何とかこなし、そろそろ飯でもと思い、一旦紫禁城から出て王府井へ向かうことにした。
今の王府井の巨大ショッピングセンターが立ち並ぶ町並みというか都心と違い、まだ当時はどちらかと言うと商店が立ち並ぶ町並み。でも人は流石に多く、結構な人出で賑わっている。
勿論北京だから有名な北京ダックの店もあるし、中国料理の店には事欠かない。でもそこは素通りして別なところを探し始める。
ひねくれ者のせいか、知っているものについては興味が無いと言うか......。
別に何かを買うつもりも無かったので、その町並みから少し外れて歩いていると、食堂らしき店があった。決してきれいな店ではなく、通りに面している部分がガラス貼りになっていて、店の中が見える。 
店内が暖かいのだろうか、湯気でそのガラスがうっすら曇っている。 
『なんかうまそーっ.....』
近づいてみると、ガラス沿いに座っている客が『鍋』をつついている。
『やっぱり冬の鍋はサイコー!』
実に旨そうに見える。でも看板を読んでも、略式漢字なので、意味がわからない。
取り敢えず入ってみることに.....。

メニューを持ってきてくれた。 結構ぶっきらぼうでニコリともしない。
見てもちんぷんかんぷんなので、鍋を食べている男性を指差して、
『アーウーアーウー。』
なんとか『同じものが食べたい』ということをわかってもらうことができた。
待つこと暫し、 出てきた出てきたぞー。おんなじだー。


『手前にあるのはタレだから、これで食べるのよー。』とたぶん言っているらしいが、やはり判らないので、取り敢えず『謝謝!』。
日本の鍋の素材の味云々とは全く趣が違う。結構肉質も硬く、癖がある。結構辛いタレのおかげで癖を消している感じがする。始めて経験する味だ。 
わたしがこの鍋を食べていることになにかあるのか? 日本人が珍しいのか?スタッフの女の子数人かが私の食べる様子をずっーと見ている。 じわーっと恥ずかしい.....。  何か言ってあげないと.....。
『好吃!好吃!』 安心したのか、やっとニコニコしてくれている。
まあまあ食べて、店を出ることにした。  会計を済ませ、少しチップを渡すと、チップ習慣が無い当時すごく喜んでくれたので、ついでにひとつ疑問に思っている事をぶつけてみた。
勿論漢字メモとボディーランゲージを使って......。
『ワタシガ タベタ メニュー ノ ナマエハ ナンデスカ ?』 女の子は店の壁に貼っているお品書きの中で、ひとつの商品名が書かれているところを指差ししてくれた。
『狗肉火鍋』そうなんだー。 狗肉ねー.........。
『好吃! 謝謝!』 私は店を出た。 


狗って漢字、日本語では“コマ”って読むよねー。狛犬(こまいぬ)に似ているけど......。もしかして、
っそう。その通り、なんとなんと、食べちゃいました。


その後、一度も食べていませんがねー!!


(※夏の暑気払いの食べ物としてではなく、当時は食べていた。)





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